繚乱狂宴

「そして、この病院に移された」

俯いているので見えないが、きっと小夜は、酷い顔をしているのだろう。

小夜の顔から垂直に降りた所の床に、涙で出来た水溜まりを見て、そう思う。

それでも、小夜の声は、非常に冷静だった。

「その時、私は思った。ヒトとして、最悪なコトをしてしまったんじゃないか、って……」

小夜は一拍置く。

それを、じっと待ってあげた。

「私は……人格障害なのよ。もう一つ……私じゃない私がいる……」

小夜から告げられた言葉。

人格障害。

聞いたことがない単語。

しかし、意味は理解できる。

二重人格とか……だろうか。

「こんな……もう一つの人格があるヒトなんて……ヒトじゃない……」

二重人格なんて、ヒトじゃない。

小夜は、そう考えているのだろうか。

「親にだって、見捨てられた。あの日から、顔を合わせたことはないわ……」
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