繚乱狂宴
「愛情を一杯注いで貰って! 最後は助けてくれると信じてた! でも! 助けてくれなかった!」

これが、小夜の言っていた『裏切り』。

「何故私だけなの!? こんな身体だから、私はヒトじゃないモノとして疎外される! だから、こんな身体なんか――――!」

ナイフへと寄る小夜の手を、掴んで静止させた。

「だから、身体を殺すということか?」

「……」

「ふざけるな」

グイッ、と小夜の手を引き寄せる。

「そんなことでヒトじゃない、だと? それなら、世の中の何人が『ヒト』じゃなくなる?」

「……」

「自分だけが悲劇のヒロインだと思うな。世の中には、お前以上に苦しんでいる奴だっている」

小夜の眼がこちらを捉える。

「確かに、『もう一人』の小夜は『小夜』じゃないかもしれない。『ヒト』ではないかもしれない」

こちらも、双眸に小夜の姿を写す。

「だが、今のお前は小夜だ。『もう一人』の小夜ではない。『ヒト』なんだ」

もう小夜は、何も言えないようで、ただ、子供の様に泣いていた。

こちらも、もう言うことはない。

小夜の部屋を後にする。
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