就活ラブ -gleam-
その時点で嫌な予感はしたけれど、やはり彼女は終わった瞬間に「お疲れさま」とだけ言ってさっさと友達の方へ行ってしまった。


あーあ。話しかけようと思ってたのに。


代わりに俺は、友達の傍で支度を終えるのを待っている長田さんをぼうっと観察する。

友達は「モエ早いよー」と言いながら焦ってプリントをしまっていた。

あの子の名前は「モモエ」だったはずなんだけど、なんで「モエ」なんだろう。
俺の聴き間違いだったのかな。


長田さんは友達が手間取っているのを責めるでも宥めるでもなくただにこにこと立っている。

俺もふたつ隣のテーブルにいる彼女をただ見ている。


すると長田さんがほんの一瞬だけ、心ここに在らずっていう感じの表情をした。

たぶん俺以外は誰も気付かなかったと思うけど。

それくらいわずかな変化だったけど、なんとなく俺は彼女から目が離せなくなっていた。



「おまたせー。じゃあ行こ!」

ついに友達が立ち上がって、二人は楽しそうに出て行ってしまった。


俺も後を追うように廊下に出て、エレベーターを待つ二人を少し離れたところから見ていた。



「ダイ!勝手に帰ろうとすんなよ」

後ろからザキの声がして、ようやく自分にも連れがいたことを思い出す。

元来の好奇心のせいか、声を掛けてくれなければそのままストーカーに成り下がるところだった。


やっと我に返って、俺は長田さんから意識を外した。

「悪い!忘れてたわ」


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