就活ラブ -gleam-
俺は使命感に燃えて「よし、いつでも寝ていいぞ」なんて思っていたのに、結局長田さんは一度もうとうとさえしないで、最後までセミナーを終えてしまった。

なんだか妙に残念に思う自分を変に感じながら、俺たちは連れたって歩き出した。





帰りの電車ももちろん一緒だったから、指定席を並びにしてもらって電車でもいろいろと話をした。


「日下部くんは広告以外にどこか考えてるの?」

「広告以外はあんまり考えてないけど、さすがにそれじゃあ心許無いから他も受けるつもりではあるよ。でも最後まで粘る」

大手にこだわらなければ、それなりの数はあるからね。地方でもいいし。


俺がそうやって言うと、長田さんがにこりとしながら「そっか。がんばってね」なんて激励の言葉をくれた。

「がんばろうね」じゃなくて「がんばってね」なんて。

しっかりしてるように見えてこの子ちょっとボケてるのかなと疑いながら、俺はつっこむ。


「いやいや。長田さんも他人事じゃないでしょ?」


長田さんは「そうだったね」と形だけ訂正しながらも、あっさりと言い放った。

「でも私、コネもないしOBもいないから。半ば諦めてる」


俺は咄嗟にもったいないと感じた。
別に彼女の何を知っているわけでもないけど、能力がある人だと言うのはこないだのセミナーで十分わかっていたし。

どうにか引き止めることはできないかと考える。

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