【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
ただ…それだけなのに。
「…では、何故お二人は奈々様をこちらの学園に?」
「それは…」
…それはどうして、だろう。
「明日、嫌でもご理解されるはずです。ご自分の立場が、どのようなものなのか」
自分の…立場…?
そんなもの…知るかっつーの!
「…寝る。今日はもう寝る!」
「かしこまりました。では今すぐ就寝のご準備を…」
「いいよ、それくらい自分でできるから!おやすみなさいっ!」
今は一人になりたいの。
「そうですか…では、ごゆっくりお休み下さい」
彼の言葉を背に、あたしは自分用のベッドが置いてある部屋へと向かった。
パタン、と音を立てて閉まったドア。
広くてどこか淋し気な空間に、独り佇む。
閉めきったカーテンの向こうには
沈みかけの夕日が、世界をオレンジ色に染めあげていた。