【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
キィ──…ッ
という音が会場に響き渡ったのは、あたしが想いを馳せていた
まさにその瞬間。
フロアは一瞬にして静寂に包まれる。
姿を見せたのは、彼女。
緊張感がさらに重苦しい空気を取り巻く。
「…では、後程お迎えに上がります。エミリ様」
「えぇ、頼んだわ。南」
扉を開けたのは、彼。
たった今、あたしが会いたいと願ったばかりの…彼。
エミリさんは彼に笑顔を向けると、チラリとこちらの様子を伺った。
…気のせいかな。
今、彼女と目が合った気がしたのは
あたしの気のせいかな…?