【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
譲れないモノ
───…
「…はぁー………」
パーティーの途中、あたしはフロアの片隅で、大きく息を吐いた。
鮮やかな色を落とすこの空間には、とてもじゃないけど溶け込めそうにない。
あたしはいつまで、表面だけの笑顔を作ればいい…?
「奈々ちゃん」
ふと、柔らかな声色が耳に届いた。
…あたしのよく知っている人の、声。
「千代さん…」
「ちょっと、いいかしら?」
彼女のよく通る声が、会場内に小さく響く。
穏やかな表情なのに、その瞳からはわずかな緊張感が伝わってくる。