【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「だけどやっぱり…結婚なんて出来るわけなかったのよ。私には譲れないものがあったから」
「…譲れない、もの…?」
「きっと、奈々ちゃんにも分かるはずよ」
どこか遠くを見つめる千代さんの目を、あたしは必死に追いかけた。
強い眼差しで、凛とした表情を崩さない彼女の瞳には
今、何が映っているのだろうか。
何を見て、何を感じているのだろうか。
「………私はね、私の執事に恋してしまったの。それがどういうことなのか、ちゃんと解っていたはずなのに」
「えっ…?」
あたしと…同じだ。
千代さんは…あたしと同じ、禁忌を犯してしまったんだ。
決して許されることのない、禁断の恋に…堕ちてしまったんだ。