【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
そう言いきる前に、口の動きが止まった。
それだけじゃない。
まるで金縛りにでもあったかのように、全身身動きがとれない。
一瞬、頭がクラッとして倒れそうになったあたしを咄嗟に彼が抱き抱えた。
涙が止まらない瞳には、もう、何も映らない。
真っ白な空間で、誰かの声が聞こえた。
──大きくなったら、奈々は隼人くんと結婚するのよ。
──奈々、大人っていうのはね、悲しいことや辛いことを乗り越えて、それでも強く生きることができる人のことをいうんだよ。
──はい。お父様、お母様。
…それは
幼い頃のあたしだった。