【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
どうしてあなたが
目の前にいて
どうしてあたしの
手を引いているの…?
後ろから、丹原さんの声が聞こえる。
あたし達の跡を追ってくる。
「奈々様、こちらへ…!」
そこはあまり使われていないのか、少しホコリっぽくて薄暗い。
月明かりに照らされて青白く光る彼の顔を、あたしはまじまじと見つめた。
「ここなら、少しくらい時間が稼げるでしょう」
…どうしよう。
言葉が、出てこない。