【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
一度落とした視線を再び持ち上げ、手のひらをギュッと握りしめた。
大きく息を吐き、高ぶる胸を落ち着かせる。
あたしの瞳を真っ直ぐに見つめる彼のことを想うと
どうしようもなく、胸が苦しくなる。
濡れた眼を拭い、あたしは覚悟を決めてゆっくりと口を開いた。
「…あたし……いけないことだとわかっていても、許されないことだとわかっていても、やっぱり南のことが好き…っ。
だから──…」
“だから、一緒に逃げよう”
──そう、続くはずだった。