【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
だけどあたしの声は
落ち着き払った彼の声によって、虚しく掻き消されることとなった。
「私も…奈々様をお慕いしております。執事としてではなく、一人の男として」
鼓膜が揺れ、心臓が震えた。
それなのに…今の言葉。
嬉しいはずなのに…胸騒ぎが治まらない。
…どうしてかな。
この言葉を素直に受け取ることができないのは…。
「…みな…「奈々様は、ご存知でいらっしゃいますか?私の…名を」
…まただ。
また、遮った。
まるであたしに、その言葉を言わせないように。
涙腺が弱りきったあたしの瞳に、悲しみの色が落ちる。
冷たい空気が、濡れたあたしの頬を悪戯に掠った。