【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「南は…南でしょう…?どうしてこんな時に、そんなこと聞くの!?」
フッ、と彼は微笑む。
あたしと同じ、悲しみの色を瞳に落として。
「違いますよ。私の、ファーストネーム」
「南の…ファーストネーム…?」
あぁ、どうして。
どうして今まで、気づかなかったの…?
言われてみれば
あたし、南のこと何も知らない。
「………」
南の名前も、誕生日も、血液型も、好きなものも、嫌いなものも…
家族のことも、執事としての過去も、あたしの執事になった経緯も……
全然、知らない…。
……わからない。