【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「奈々様…」
南の声が、静寂の中で小さく木霊した。
たったそれだけなのに、胸が苦しくなる。
心臓が止まりそうになる。
こんなにも大好きなのに…どうしても言えない。
こんなにも大好きだから…たった一言が言えないの。
それなのに、あなたは……
「…例えどんなにこの身が離れていようと、私の心は奈々様の元にあります。決して、離れることはございません」
「…南っ……」
…あなたって人は、本当にズルい。
「誰よりも…何よりも…私は奈々様のお側であなたをお守りしたい……
許されるものなら、今すぐここからあなたを連れ出してどこか遠くへ行ってしまいたい……」
「……っ…!」
こんなにも簡単に言ってしまうのね。
あたしがどうしても伝えたくて、どうしても伝えられなかった言葉を。