【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「あたしも…このままずっと、南の側にいたいよ…!」
滲む視界でそれでもはっきりと確認できるのは、目の前にいる愛しい人の存在。
ゆっくりと手を伸ばすと、彼は応えるように力強くあたしの身体を抱きしめた。
二人の想いは同じ。
けれど……
「……そろそろ戻りましょう。隼人様のいる会場へ」
その想いが交わることはない。
ほんの一時の幸せは、愛しい人の言葉によって終わりを告げられた。
「…嫌っ……戻りたくなんかない…!」
必死の抵抗も、南にとってはほぼ意味はなく
切ないほどに脆い繋がりが、彼によって簡単に解かれてしまった。