【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
追いかけたい。
離れていくその背中を。
追いかけられない。
力を失った両足では。
身体に…力が入らない。
駄目だ。
駄目だダメだだめだ…
全身の力が抜け、その場に崩れ落ちる。
頭の奥から、何かが溢れだすこの感覚。
ふわふわとした、どうしようもなく不思議な感覚。
「……っ、!!!!」
次の瞬間、それは今までにない激しい頭痛へとカタチを変えた。
痛みのせいで、だんだん意識が遠退いていく…
重い瞼が、落ちていく…
『ハヤト──…』
全てが闇に覆われる直前
もう一人のあたしが、夢で見たあの人の名前を呼んでいた。