【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
喪失と復元
夢を見ていた。
夢の中、ふわふわとした感覚があたしを包む。
視界は悪い。
まるで世界の全てが霧で覆われているかのような。
遠くから誰かの声。
どこか聞き覚えのある、優しい声色。
だけどとても悲しそうな声だった。
真っ白なそこには何もない。
あたしは声すら出すことが出来ず、ただただ、必死に〝何か〟を思い出そうとしていた。
何だろう。
どうしてだろう。
その声を聞いて、あたしは無性に悲しくなった。
涙が、頬を伝った。