【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「奈々は覚えてるか?」
おもむろに口を開いたお父さんが、目を細めて小さく呟いた。
「3年前の、あの日」
「……3年前?」
自分の声が、頭の中に僅かに響く。
辿る、過去。
微かに蘇ったのは、3年前のあの日の記憶。
「それって…、もしかして…!」
「──そう。お前が交通事故に遭って病院に運ばれた、あの日だ」
…交通事故。
そうだ。
あれは確か、あたしが中学一年生の時。
あの時、急ぐあたしは慌てて家を飛び出して…
曲がり角から突然出て来た車と、接触した。
気付いた時には、あたしは既に病院のベッドの上。
白い天井と、お父さん、お母さんの顔がぼんやりと見えた。