【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~


拳を握りしめた彼は、静かに口を開いた。


「それは…できません。

あの方が何を言おうと…例え奈々様の記憶が戻らずとも…私はこれからもずっと、奈々様のお側で、奈々様をお守りするのみ。

…過去の約束を果たすために…もう二度と、奈々様の元を離れるわけにはいきません。

…私は…奈々様のことをずっと…ずっと……」




次の瞬間、突然感じた、全身に伝わる温もり。


半分起こしたあたしの上半身は、力のこもった優しい腕の中にあった。


ドクンと波打つ心臓が、静まるどころかますますその激しさを増す。


速く、強く。

そして、切なく──…




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