【キミに伝えたくて…】~執事に恋したお嬢様~
「あら?聞いてなかったかしら?
南さんには奈々ちゃんの執事として今日から寮生活を共にしてもらう、いわば奈々ちゃんのパートナーよ」
「ぱ、パートナー?」
…いやいや。
いきなりそんなこと言われましても困りますって。
〝はい、そうですか〟とはならないでしょ、普通。
彼の方に目をやると、ニッコリと笑って深々とお辞儀をされたので
あたしはひきつった笑顔をお返ししておいた。
「失礼。千代様、お時間のほうが…」
突然そう言って千代さんの後ろから現れたのは、これまた燕尾服姿の見知らぬ男。
「はいはい…じゃあね?奈々ちゃん。あっ、南さん。奈々ちゃんをよろしく頼むわ。
飛田、行きましょう」
「はっ。
…では、失礼致します」
「えっ?ちょ、ちょっと!?もっとちゃんとした説明はないわけ…!?」
足早な二人の足音が、辺りに響く。
開いた口が塞がらず、呆然と立ち尽くすあたし。
側には一人の若き執事。
ぴゅーっと吹き付ける冷たい風が、あたしの新生活を祝ってくれた。