優しい嘘
毎週水曜日の帰る時間がどんどん遅くなっていった。
帰る日が翌日の朝になる日もあった。
「今日も作ったって無駄だよ。どうせお父さん帰ってこないよ」
夕食時、瑠美が言った。
「仕事忙しいのよ。コンサート近いでしょ」
「違うよ、お母さん分かってるんでしょ」
「瑠美」
「また女の人のところでしょ」
「瑠美、違うわ」
「とぼけないでよ!」
瑠美は部屋に戻った。
―このままではいけない。
家族がバラバラになってしまう。