優しい嘘
ヨーロッパ滞在も2週間が経ち、俊光の様子が少し変化していった。
コンサートが近いせいなのか、落ち着かなくなり、不安そうな表情を見せていた。
出掛けるのも智江と瑠美だけ行かせ、
自分はピアノの練習でこもっているか、コンサートの打ち合わせに行っているかどちらかだった。
部屋に戻ると、
俊光が電話で怒鳴っていた。
「何考えてるんだ!今頃になってそんな話、遅いんだよ!」
瑠美はすぐ自分の部屋に入っていった。
余程コンサートの準備が出来ていないのだろうか。