優しい嘘
それから、日本に戻り、表面上は穏やかに過ごしていたが、
瑠美が部屋に籠ることが多くなった。
俊光とは会話もほとんどしなくなっていった。
「もう反抗期なのか?寂しいな」
と呑気なことを俊光は言っていたが、
瑠美に避けられているのはさすがに辛そうだった。
「瑠美、どうしてお父さんと話さないの?お父さん、寂しいのよ、あれで」
「そんなことないよ。あんなの、お父さんじゃない」
「瑠美?何言ってるの」
「お母さん、泣いてるでしょ。いつも」
「瑠美…見ていたの?」
「お母さんを泣かせるなんて、私許せない」
「瑠美…」
彼女は見ているのだ。
私達を。
そして彼に隠れて泣いていたことも。
(ごめんね、心配かけて…)