優しい嘘
相変わらず、夫婦関係は昔の様には戻らなかった。
雪依と別れてからも、
俊光は智江を抱こうとはしなかった。
俊光は雪依をまだ愛している様だった。
彼はベッドでバーボンを飲んでいた。
最近、俊光は夜一人で飲んでいることが多い。
「あなた…」
背中を向けている俊光の背中を抱く。
すると、彼はベッドから出てしまった。
「…どうして?」
「ごめん」
「まだ、雪依という娘を忘れられないの?」
「……タバコ吸ってくる」
「とりあえず私とセックスしたら?」
俊光が笑った。
「お前がそんなこと言うなんてな。驚きだよ」
「来て」
そう言って、俊光をベッドに戻した。
俊光もようやく決心したのか、ガウンを脱いだ。
そうしてベッドに入った。
―久しぶりの感覚。
ようやく、夫と元に戻ることが出来る。
すると、
「…雪依…」
彼はそう呟いた。
我に返ったのか、
「―ごめん」
逃げる様にベッドから出て行った。