優しい嘘
それから、俊光は夜になるとどこかに出掛けていき、早朝になると戻っていた。
帰った時はいつもアルコールの匂いが漂っていた。
「お母さん、お父さんのこと、本当に愛してるの?」
ある日瑠美が聞いてきた。
「―え?どうして?」
「私だったら、絶対許せない。
何でずっと一緒にいるのか本当に不思議。
信じられない」
「でも、結局瑠美だってお父さんのこと、好きじゃない」
「私が?誰があんな奴」
「あんな奴って…
お父さんと一緒にいたくてあんなことまでしちゃったんでしょう?」
「まさか。
私はただ、このままじゃお母さんが壊れちゃうと思ったから。
毎晩泣いてるでしょ、お母さん」
「瑠美…」
瑠美にそこまで思わせてしまったのは自分だった。
瑠美はいつも自分を見ていてくれていた。
小学生の女の子にあんなことまでさせてしまうなんて、
よっぽど苦しかったに違いない。
…ごめんね、瑠美
心配ばかりかけて。
駄目なお母さんでごめんね。
私、もっと、強くなるから。