優しい嘘
そんな時に、
二人目が
出来てしまった。
「あなた、実は…また妊娠してるの」
「え?本当か」
俊光は素直に喜んだ。
「やったな!
次は男がいいな!娘はいつかいなくなっちゃうし」
こんなに喜ぶとは思わなかった。
「どうしたんだ、嬉しくないのか」
「…今の状況だったら無理よ」
「どういう意味だ」
「あなたが、もっと家にいてくれて、子育てにも協力してくれなきゃ、私1人じゃ2人もなんて育てられない」
しかし俊光はこう言った。
「俺は日本を代表するピアニストなんだ。
お前もその妻としての自覚を持って欲しい」
智江は失望した。
―彼は父親にはなれない。
そう思った。