闇と仮面
緊張に張り詰めた
空気が、彼女の鼓膜
に音となって響く


一つ唾を飲み込んで
振り返ると
ビルの一角に
マントを翻す男が
立っていた


その男の容姿は
奇妙な仮面に隠れて
解らないが、
全身黒い服で
コーディネイトさていて
薄気味悪い空気が
漂っていた


「…貴方、いったい誰なの?なんで、私の後を付いてくるの!?」


男は、心外だと
言わんばかりの
大袈裟な、リアクション
で言い返す


「君こそ…
いつまで、鬼ごっこを
続けるんですかねえ?」


穏やかだが、
どこか張り詰めた
空気が、少女を
緊張させる


その男は
じっと瞳だけは
少女を捕らえていた


「…見たんだろ?」


ふいに、男は
先程とは一変して
低い声になり
少女は肩を
びくつかせた



「み…見てないっ!!」


少女は自分に
言い聞かせるように
大きな声で
言い放った


次の瞬間、マントの
男は、少女の目の前から
消えていた


少女は瞬きをして
もう一度、ビルの一角を 見上げた


「お嬢さん、こっちですよ♪」

「…っ!!?」


マントの男は、物凄い力で少女を壁に追いやると
口を封じて
耳元に囁いた


「見てしまったなら、仕方ないよね…」


男の手には、冷酷に
きらめくナイフが
少女を狙っていた


少女は、男の手から
逃れようと、身もだえる事しか出来なかった


―殺されるっ…!!
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