何も言えない程、
どっちであれ睦月のことを嫌いになんてなれない。
だから涙が溢れるんだ。
放課後。
田島が俺に声をかけてきた。
「入江、今日一緒にかえらねぇ?」
「え?」
今日は睦月と帰るつもりだった。
するとすかさず睦月が俺の方に来た。
「佐介さ、俺と帰る約束してんだよね」
「あれ、仲直りしたんだ。入江にあんなことしたくせに」
「!!」
周りを見ると、他の生徒が俺を冷やかしている。
「佐介ー、お前女の子だけじゃなく男からもモテんだな」
からかっているつもりだろうが、俺からしたら笑えない冗談だ。
その間も、睦月達の会話は進んでいた。
「俺見てたんだよね。忘れ物したから教室に取りに行ったら…」
睦月はこの場で話すのはまずいと思ったのか、田島と俺の手を引っ張って教室から出ていく。