何も言えない程、
「離せよ、夏目」
田島は冷ややかな目付きで睦月の手を振り払った。
全部、知ってたんだ。
見てたのか…俺と睦月の――――――
「入江に無理矢理あんなことして、よく平気でいられるな。本当に好きなのかよ」
「俺は本気で佐介が好きだ。他人にどう思われても構わない」
「俺なら入江にそんなひどいことしない」
「…お前………」
やめろ。
もうやめてくれ。
俺なんかどうだっていいんだ。
田島も睦月も好きだ。
選べない。
でもそれ以上に、陽菜が好きなんだ。
気が付くと俺は駆け出していた。
陽菜に会いたくて。
まだ学校にいることを願って陽菜を探した。