何も言えない程、
「そういえば、入江くんって好きな子いたりするの?」
「え?な、何で?」
いきなりそういう質問するって何だろう…。
俺が問いただすと、陽菜ちゃんは俯いてしまった。
何かまずいこと言ったかな。
「今日、何の日か知ってる?」
「今日?」
知らないはずがない。
今日はバレンタイン。
自慢じゃないけど毎年たくさんのチョコをもらってきた俺が、バレンタインを忘れるなんてあり得ない。
ましてや今年は好きな子が同じクラス。
可能性なんかほとんどないのに、何故だか期待してしまう。
「……いるよ、好きな子」
「そっか」
それはあなたです。
なんて言えるはずもなく、ただただ無言の時が流れていく。