何も言えない程、
「あ…えと……。どうし――――」
そこまで言いかけたところで、陽菜ちゃんは突然、淡いピンク色の小さな箱を俺に突き出した。
「………これ、頑張って作ったから…っ」
それだけ言うと、また黙り込む。
その間も俺の中では期待ばかりが脈を打つ。
これは、もしかして。
頑張って作った?
何で?
誰のために?
何のために?
バカだ俺。
何でこんなに緊張してるんだ。
義理かもしれないだろ。
本命は俺じゃないかもしれない。
でも、その動揺を悟られたくなくて、控えめに笑顔を作ってお礼を言う。
「ありがと」
「それで?」
「え?」
「好きな子って……誰?
言えないならいいよ、別に…」
「………」
ここは勇気を出して名前を出すべきか。
言おう。
今言わずにいつ言うんだ。
早くしないと他の生徒が登校してきてしまう。