冬うらら2

 そっと、部屋のドアを開ける。

 このドアは、きっとびっくりしているに違いない。

 彼女が来てからというもの、何度かとは言え、優しい扱いを受けたからだ。

 それまでは、一度たりとも彼の好意を受けたことなどなかっただろう。

 真っ暗だ。

 確かに、電気をつけっぱなしで眠る人も少ないだろう。

 しかし、これではメイの姿が確認出来ない。

 少し躊躇した後、壁のスイッチに手を伸ばした。

 眠りが深いなら、きっと明かりくらいでは目覚めないだろう―― そう願いながらパチン、と。

 明るくなった視界に、彼女はいなかった。

 だが、ベッドの上が一部盛り上がっていて、そこに誰かが横たわっているのは明白だ。

 カイトは、足音を忍ばせながら近づく。

 横向きに眠っているのが分かったので、顔の方に回った。

 すぅ。

 その寝顔を見て、カイトは安堵した。

 彼女はそこにいるし、ぐっすり眠っているのだ。

 心配するようなことは、何もなかった。

 まつげ、なげーな。

 たくさんの寝顔を、知っているワケではない。

 朝は、彼女の方が早く起きるのがほとんどで、夜は明かりを消してしまうからだ。

 そう言えば。

 今日は。

 キスをしていなかった。

 朝は、ぎゅーっと抱きしめるだけだったし。

 夜は、今帰ってきたばかりだ。

 今日のカイトを知らない唇が、そこで静かに息づいている。

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