冬うらら2

 何故か、カイトは周囲を確認してしまった。

 こんな時間にこの部屋には、二人以外の誰もいるはずなどないのに―― 自分を誰かが監視しているのではないかという、強迫観念のようなものがあった。

 いや違う。

 心に、後ろ暗いことが走ったので、これからドロボウに入るかのような素振りを見せてしまったのだ。

 そっと。

 ベッドに腰かけて、もう一度彼女の寝顔を眺める。

 戸惑いながら指を伸ばすが、何の反応も返らない。

 彼女の眠りが、深いことを証明してくれていた。

 それに助けられ。

 カイトは、身体をかがめて。

 彼女の吐息に、キスをした。

 呼吸の邪魔をしないくらい、ほんのわずかだけ。

 深くもない。

 そっと離れる。

 カッ。

 カイトは、いま自分がしたことをはっきり認識して、頬の端を赤くした。何やってんだ、と。

 彼女の承諾も何もない、こんな寝込みを襲うようなキスをしてしまったのだ。

 そういうんじゃねぇ!

 ムズムズする感じを切り落とそうとするのだが、悪性の腫瘍よろしく身体のあちこちに転移しまくる。

 最後には脳に到達したようで、彼は自分の頭をかきむしりたい衝動をこらえるのが大変だった。

「ん?」

 けれども、そんな彼の動揺が―― 止まった。

 津波が来るぞ、と誰かが言った。

 さっき、カイトが起こした地震のせいだ。

 眠っているメイが見える。

 しかし。

 顔が真っ赤になっていた。


 ザッパーン!!!!

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