冬うらら2

「ご、ごめんなさい…眠れなくて。で、でも! 眠ってないと怒られそうで……その…」

 子ダヌキのように小さくなりながら、メイはベッドの上に座り込んで言い訳を始めた。

 言い訳をしなければならないのは、カイトの方なのに。

 しかし、いまの彼はショックの方が、先に立っていたのだ。

 自分を慰めているところを、彼女に見られた―― まではいかないが、かなり近いくらいの痛手を感じていた。

 合わせる顔が、ねぇ。

 ベッドの側に立ちつくしたまま、彼女の方を見られないカイト。

 穴があったら入りたかった。

 恥ずかしくて後ろめたくて、とにかく大変な騒ぎだ。

 いたたまれない空気に、カイトはくるっと背中を向けた。

 メイが起きていると知っていたら、自分はあんなことを絶対にしなかっただろう。

 眠っていたからこその、キスになったのだ。

 理由は、『キスをしたかったから』

 ただ、それだけ。

 しかし、それを素直に伝えられるほど、彼の心は融通がきかなかった。

「あっ! 怒らないで…ごめんなさい」

 彼女の方は、カイトの背中に怒りでも感じたのだろうか。

 違うのだ。そうじゃないのだ。

 言葉に出せないものがイライラにすり替わって、カイトの身体に重くのしかかる。

「謝んな」

 しぶしぶ、彼はメイの方を振り返った。

 そうでないと、もっとひどい誤解をされてしまいそうだったからだ。

 それは困る。

「わりぃ…」

 謝るなら、自分の方なのだから。

「え?」

 しかし、彼女は面食らった顔になった。

 そこで、カイトが謝ってくるとは思わなかったのだろう。

「勝手に…おめーに……」

 それ以上は、言えなかった。

 彼女が、察してくれることを願うだけだ。

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