冬うらら2

「あ…の、その…ホントに温めるだけなら、すぐだから。それに、おいしいご飯を食べて、お仕事に行って欲しいの……ホントに、ホントに、すぐだから」

 着替えててね。

 カイトから遠くに離れようとしたら、するっと捕まれていた手が離れた。人肌のぬるい水の感触だけが、腕に残る。

 それで、ほっとした。

 彼が、自分の気持ちを分かってくれたような気がして、すごく嬉しくもなった。

 その勢いで、パジャマのままドアを開けて出ようとした時。

 しかし、自分がかなり無謀なことをしようとしいたのに気づくのだ。

 廊下には、暖房などないのである。

 冷たい空気に襲いかかられて、彼女は慌てて上着を取りに戻ったのだった。

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