冬うらら2

 昨日、スーパーで買った魚のすり身で、つくねボールを作っていた。

 レタスと、そのつくねボール。

 それから、千切りにした野菜を麻婆の素で味付けして炒めたモノ。

 魚のお吸い物。

 電子レンジから出して、お皿に戻した頃、カイトが2階から降りてきた。

 ご飯をよそって、お茶の準備をして―― これで、出来上がり。

 ほら、早く済んだでしょう?

 そんな笑顔で、カイトを迎え入れる。

 これなら彼だって、メイが手間取るような仕事でなかったのを分かってくれるはずだ。

 自分が、すごく家事に優秀な気分になれた。

 ほんのちょっとだけ、だけれども。

「おめーは?」

 しかし。

 椅子に座るなり出てきたその一言が、彼女の笑顔をストップさせた。

 素早く出来たのは、すでに昨夜作ったものを温め直しただけだからだ。

 でも、それはカイトの分だけである。

 自分の分は、昨日食べてしまったのだから。

「あ、私は…後でちゃんと作って食べるから……お吸い物、少し残ってるし、ご飯もあるから」

 彼女は、大丈夫ということをアピールしようとした。

 しかし、彼の観察するような目が、緩む様子はなかった。

 ガタッ。

 カイトは、一度座った席を立ち上がった。

 無言のまま、調理場に消えていく。

 彼が一体、調理場に何の用があるのか。

 ついて行こうとしたが、既に彼は戻ってくるところだった。

 何?

 そう思う間もなかった。

 彼は、新しい皿を一つ置くや、おかずを半分それに移したのだった。

 あっ。

 メイは、これから山ほどの言葉でマシンガンを乱射し、カイトを止める予定だった。

 どういう意味の行動か、分かってしまったのだ。

 なのに。

「一緒に…食え」

 理屈では計算不可能な声で―― そんなことを言われてしまったら。

 本当にカイトが、そうして欲しいのだと、肌で感じてしまったら。

 メイには何が言えようか。


 今朝は、パジャマの身体をぎゅっと抱きしめて、カイトは会社に行った。
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