冬うらら2
□
「え? あ? カイト?」
メイは、大きな目を更に大きく見開いて驚いていた。
それはそうだ。
定時に会社を出たとしか思えない時間に、彼が帰り着いてしまったからである。
「今日は遅くなるん…きゃっ!」
自分の疑問を納得させようとする彼女の腕を掴むなり、玄関前にアイドリングさせたままの車に押し込む。
カイトは、妻を誘拐したのだ。
「どうか…したの?」
心配そうな目に、カイトの方がいたたまれなかった。
どういう風に、彼女に説明していいか分からなかったのだ。
いや、説明なんかしたくなかった。
「すぐ着く…」
カイトが、答えられたのはそれだけだった。
そして。
本当に到着した。
「ここ…」
メイも自分も、上着を着ていない。
車を建物の前に無断駐車したまま、看板を見上げようとする彼女を押して、足早に温かい店内に入る。
「いらっしゃ…ああ、いらっしゃいませ」
一度目のいらっしゃいませは、誰にでも向けられる挨拶。
しかし、後ろからかぶった方の言葉は、何もかも了解済みの声だった。
「あ、あの…カイト?」
明るい店内。
ガラス張りの商品ケース。
上着のない自分と、エプロン姿のメイ。
「結婚指輪でしたね…じゃあ、サイズを計りましょうか」
店主は女性で―― そして、笑顔だった。
「え? あ? カイト?」
メイは、大きな目を更に大きく見開いて驚いていた。
それはそうだ。
定時に会社を出たとしか思えない時間に、彼が帰り着いてしまったからである。
「今日は遅くなるん…きゃっ!」
自分の疑問を納得させようとする彼女の腕を掴むなり、玄関前にアイドリングさせたままの車に押し込む。
カイトは、妻を誘拐したのだ。
「どうか…したの?」
心配そうな目に、カイトの方がいたたまれなかった。
どういう風に、彼女に説明していいか分からなかったのだ。
いや、説明なんかしたくなかった。
「すぐ着く…」
カイトが、答えられたのはそれだけだった。
そして。
本当に到着した。
「ここ…」
メイも自分も、上着を着ていない。
車を建物の前に無断駐車したまま、看板を見上げようとする彼女を押して、足早に温かい店内に入る。
「いらっしゃ…ああ、いらっしゃいませ」
一度目のいらっしゃいませは、誰にでも向けられる挨拶。
しかし、後ろからかぶった方の言葉は、何もかも了解済みの声だった。
「あ、あの…カイト?」
明るい店内。
ガラス張りの商品ケース。
上着のない自分と、エプロン姿のメイ。
「結婚指輪でしたね…じゃあ、サイズを計りましょうか」
店主は女性で―― そして、笑顔だった。