冬うらら2

 大きな手で、浅黒い肌で―― その指に結婚指輪、と想像するだけで、彼女の貧困な想像力であったとしても、素敵なことははっきり分かった。

 全然軟弱な感じはしない。

 チャラチャラした感じもしない。

 きっと、生まれて一度も指輪なんかはめたことがないだろうそのまっさらな指に、しっかりと男っぽく馴染むだろう。

 そう考えるだけで、心拍数が上がる。

 もしも、自分が彼の会社の女子社員だったら、その指輪を見て、「あーあ」とため息をつくのだ。

 すごく似合っているのに、それには誰か違う女の人の名前が刻んであるのだから。

 カイトは、自分の価値を間違っている。

 だから、自分には似合わないと思っているのだ。

 でも、よかった。

 ほっとした部分が、彼女に呼びかけてきた。

 自分とお揃いの結婚指輪がしたくない、というワケではなかったのだ。

 自分の中で渦巻いた怖い妄想が、単なる思い過ごしであることの証拠のような気がして、本当に安堵した。

「オレには、似合わねぇ…」

 でも、カイトはまだそう主張していた。


 明日、真偽のほどは証明されるだろう。

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