冬うらら2
□3
 朝―― 気になることがあって、ふっと目が覚めた。

 そういえば。

 寝る前から、ずっと彼は翌日の引っ越しについていろいろ考えていたのだ。

 しかし、途中からは全てふっとんでしまった。

 何しろ。

 メイと、夜を過ごさなければならないのだから。

 他のことを、じっくり考えている余裕などなかった。

 しかし、その時に引っかかっていたことが、明け方になって彼を揺さぶったのだ。

 ぱちっと目を開けたカイトの頭には、彼女のあの部屋が思い浮かぶ。

 ベッドやストーブなどがあった。

 それに関する感慨などは、脇に置いておくとしても、いまのままでは不都合があったのだ。

 カイトの車に、そういった家財道具は積めそうになかったのである。

 まあベッドをバラせば、もしかしたら入るかもしれないが―― セダン・タイプの車は、人が乗るのには適しているけれども、荷物を積むのにはちっとも適していないので、積み込める量など知れたものだ。

 このままでは、無駄な時間をその引っ越しとやらで費やす可能性があった。

 いや、引っ越しにつきあうのは別に平気だ。

 何時間かかったっていいと思ってる。

 しかし、あの部屋に長くメイを置いておく、ということについては、カイトはちっとも嬉しくなかった。

 やはり、早く引っ越しを終えて。

 あの過去をなくしてしまいたかった。

 だから、彼はベッドから起き出したのだ。

「ん…」

 メイが、その振動にか微かに声を洩らす。

 ぎくっとして振り返ったが、彼女はまだ眠りの井戸の中にいるようだった。

 ほっとして、着替えと身支度を済ませる。

 それから部屋を出た。

 彼女が眠っている内に、一仕事やっつけようと思ったのだ。

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