冬うらら2

 時計を見れば、7時5分。

 営業時間の早いレンタカー屋なら、もう開けているはずだ。

 車を出し、駅前のレンタカー屋を探す。

 1件目は、8時から営業という根性ナシだったが、2件目は7時から開いていた。

 明かりがついている。

 カイトは、自分の車をガンと止めて事務所に入った。

「いらっしゃいませ」

 そうして、軽トラックを運転して帰ってきたのである。

 乗って行った車は、置いてきた。

 後でこの車を返す時に受け取ればいいのだ。

 しかし、帰りの運転中、ひっかかることを覚えた。

 この車に自分が乗るのはいい。

 たとえ、座り心地が悪かろうが、背のリクライニングを1ミリも動かせなくても平気だ。

 けれども、この助手席にメイを乗せることになる。

 そのことを、深く考えていなかったのだ。

 軽トラックに、メイ。

 右脳が、見たこともないくせに、その画像を勝手に生成する。

 一瞬、その映像を拒否しかけたが、カイトはきちんと最後までそれを確認してしまった。

 軽トラックに乗っているメイ。

 きっと、彼女の性格からすると、イヤな顔一つせずに乗り込むだろう。

 そうして。

 予測の中での彼女の顔は―― 笑っていた。

 にこにこと。

 軽トラックの助手席でも、何だか嬉しそうにしている映像ができあがっていたのである。

 こんな安っぽい車の、座り心地の悪い助手席に乗せているのに、どうして笑っているのか。

 しかし、それはあくまで彼の右脳が作り出したものなので、真実かどうか分かるはずもない。

 正直を言えば、乗せたくなかった。

< 13 / 633 >

この作品をシェア

pagetop