冬うらら2

 クソッ。

 その落ち着かない苛立ちのまま、小さい方の指輪を掴み出す。

 とにかくこっちを。

「手ぇ出せ!」

 本日、二度目のその言葉だった。


     ※


 おずおずと、メイは手を出した。

 恥ずかしそうに、ますます頬が赤らんだ。

 が。

 ソファの時とは何か違った。

 そう。

 彼女は、手の甲を上に差し出したのだ。

『違う、手の平を上にしろ!』

 そう訂正しかけた。

 でないと、メイに指輪を渡せないではないか。

 手の甲に乗せたら、落ちてしまう。

 ハッ!

 しかし、そんな無粋な言葉を出してしまう前に―― カイトは気づいてしまった。

 ま、待て。

 汗が流れる。

 ゴクリと唾を飲んだ。

 彼女は手の甲を上に、そして左手を出していたのである。

 カイトの言った手を出せという言葉を、どう解釈したのか。

 彼は、ただ指輪を渡したかっただけであって。

 だが、この状況から推測するに。


 カイトが、この指輪を、彼女の、薬指に、はめなければ、ならないのか。


 うわぁぁぁぁ!!!!


 パイプ椅子を持ち上げ、コックピットの機械を全てめった打ちしたい衝動のまま―― フリーズした。
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