冬うらら2

 夢が、こんなに温かいだろうか。

 夢が、こんなに力強いだろうか。

 吐息も呼吸も声も、カイトが何もかもリアルになる瞬間―― それが、彼との接触。

 戸惑いと緊張で、喉がカラカラになってしまいそうだった。

 差し出した左手に、変に力がこもってしまった。

 なのに。

 ???

 メイは、赤い顔のままぱっとカイトの方を見た。

 彼女の左手に、触れてくる気配がなかったからである。

 カイトは、じっと手を見ていた。

 彼の目も、戸惑っている。

 どうしたの?

 何か、問題でも生じたのだろうか。

 それとも、はめることについて問題でもあるのか。

 とりあえず。

 メイは一度、その手を引こうとした。

 一人だけ、こんな風にずっと手を出しているのが恥ずかしかったし、寂しかったのだ。

 まるで、ダンスパーティ。

 自分に手を差し出されたと思って、自分もそれを返そうとしたら、隣の女の子だった、みたいな。

 出してしまった手を受け取る相手もいなくては、バツが悪く引っ込めるしかない。

 でも。

 もしも、カイトと同じ学校であったとしても、彼はダンスパーティには誘ってくれないような気がした。

 そういう行事が、好きそうに見えなかったのだ。

 結局、メイにとっても意味のないダンスパーティになる。

 一番誘って欲しい人に誘ってもらえない―― 壁の花。

 すべて、もしもの世界の妄想だけれども。

 メイは、その一瞬で様々なことを考えながら、手を引いたのだった。

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