冬うらら2

 自分の甲斐性とやらで、まだちっとも彼女を綺麗に着飾れたことさえないのに、軽トラに乗せなければならないのだ。

 これじゃあ、甲斐性どころではなかった。

 オレ一人で…。

 けど…。

 クソッ。

 色々と葛藤しているうちに、彼は家まで帰り着いてしまったのだ。

 まだ、全然何の決着もついていないというのに。

 それと、もう一つ問題があった。

 う。

 どうやって、このトラックのことを彼女に切り出そうか、ということである。

 今度は、カイトはそれを考えなければならなかった。

 きっと彼女のことだから、どうして軽トラックがそこにあるのか聞くだろう。

 その時に、またこの口がロクでもないことを言わないように、シミュレーションしておこうと思ったのだ。

 素直に借りてきた、と言えばいいのである。

 何も悩むことはない。

 しかし、『ありがとう』とか『ごめんなさい』とか言われずに済むような言葉はないか、とゼイタクなことを考えてしまったのである。

 そんなカイトが、トラックを玄関前につけようとした時。

 やはり、まだその件についても何の決着もついていないというのに。

 玄関のドアが、バタンと開いたのである。

 一瞬、シュウが休日出勤でもするのかと思った。

 しかし、出てきたのはその男に比べたら、小さな身体だったのだ。

 瞬間的に、カイトは硬直した。

 まさか、メイがいきなり出てくるとは思ってもみなかったからだ。

 キッと、ブレーキを踏んで車を止めたが、視線はずっと彼女に向けたままだった。

< 14 / 633 >

この作品をシェア

pagetop