冬うらら2

 左手に。

「きれい…」

 目の前に、手を持ってきてつぶやく。

 自分の手には見えなかった。

 まるで、幸せそのものの手だったのだ。

 しばらく、何度も何度も眺めてしまった。

 そして気づく。

 そんな自分を、カイトが見ているということに。

「すごく嬉し…ありが……」

「なっ、泣くな!」

 目の中にたまったそれを、彼に見つかってしまったようで、慌てた大きな声でストップを言い渡された。

 ごしごしと指で拭く。

 ここで、泣いて終わってしまってはいけないのだ。

 まだ、彼女にはやらなければならないことがあるのだから。

「もう一つは…私がカイトにはめてあげたいな…」

 メイは、彼が持ったままの白いケースを見た。

 そこには、一回り大きな指輪が残っているはずだったのだ。

 一瞬意味が分からなかったようなカイトは、その視線で気づいたのか。

「……!」


 絶句されてしまった。

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