冬うらら2
□
左手は、カイトにとっては利き手だった。
彼女に一番触れる手の方に、指輪があるのだ。
もうその金属は冷たくなく、彼の体温と同じ温度でしっかり馴染んではいたが、まだカイトはその有様を見られないままだった。
そうして、隣に眠っているメイの左手を捕まえる。
起こさないようにそっと。
ベッドランプにちかっと光ったそれを見ていると、また愛しさが溢れてくる。
こんな指輪という物体に、彼は感情を呼び起こされるとは思ってもみなかった。
この世の中に存在するいろんなものの中で、自分にとって意味のあるものがいくつかある。
存在自体の意味と一緒に、記憶や感情も押し込められるモノがあるのだ。
きっと、これがそう。
彼女に、『自分があげた』と、はっきり自覚出来るもののせいかもしれないが。
この指輪が、特別なものであるということだけは、彼もはっきり認識出来た。
「カイ…ト?」
じっと左手を眺めていたせいか、彼女が起きてしまった。
声が重いのは、眠りの淵にいたせいか。
それとも、さっきのカイトの無茶のせいか。
どうしても、愛しさが炸裂すると自分を押さえきれない。
本当は慈しみたいのに、むさぼるばかりだ。
どうしようもない。
彼女を側に置いていると、すぐに平静でいられなくなるのだ。
そっと抱き寄せながら、彼はベッドランプを消した。
「寝ろ…」
「ん…」
そう答えたにも関わらず、メイの手が彼の身体に触れる。
何気なく、ではなく。
微かな意思がある動きだ。
何をしているのかと怪訝に思うまでもなかった。
彼女の、おそらく右手が―― 彼の腕をたどって指先にたどりついたのだ。
確かめるように、カイトの左手に触れるのである。
薬指が。
探られた。
また、彼を火だるまにする気か。
左手は、カイトにとっては利き手だった。
彼女に一番触れる手の方に、指輪があるのだ。
もうその金属は冷たくなく、彼の体温と同じ温度でしっかり馴染んではいたが、まだカイトはその有様を見られないままだった。
そうして、隣に眠っているメイの左手を捕まえる。
起こさないようにそっと。
ベッドランプにちかっと光ったそれを見ていると、また愛しさが溢れてくる。
こんな指輪という物体に、彼は感情を呼び起こされるとは思ってもみなかった。
この世の中に存在するいろんなものの中で、自分にとって意味のあるものがいくつかある。
存在自体の意味と一緒に、記憶や感情も押し込められるモノがあるのだ。
きっと、これがそう。
彼女に、『自分があげた』と、はっきり自覚出来るもののせいかもしれないが。
この指輪が、特別なものであるということだけは、彼もはっきり認識出来た。
「カイ…ト?」
じっと左手を眺めていたせいか、彼女が起きてしまった。
声が重いのは、眠りの淵にいたせいか。
それとも、さっきのカイトの無茶のせいか。
どうしても、愛しさが炸裂すると自分を押さえきれない。
本当は慈しみたいのに、むさぼるばかりだ。
どうしようもない。
彼女を側に置いていると、すぐに平静でいられなくなるのだ。
そっと抱き寄せながら、彼はベッドランプを消した。
「寝ろ…」
「ん…」
そう答えたにも関わらず、メイの手が彼の身体に触れる。
何気なく、ではなく。
微かな意思がある動きだ。
何をしているのかと怪訝に思うまでもなかった。
彼女の、おそらく右手が―― 彼の腕をたどって指先にたどりついたのだ。
確かめるように、カイトの左手に触れるのである。
薬指が。
探られた。
また、彼を火だるまにする気か。