冬うらら2

 いま、ベッドから出てきたばかりというような、パジャマ姿のメイは、そのまま玄関に立ちつくしている。

 バカ野郎!

 ハッと我に返ったカイトが、一番最初に思ったのは、その言葉だった。

 パジャマ一つで、この寒いのに玄関から出てきているのである。

 上着くらい着てくればいいのだ。

 車の音か何かで起き出してきたのだろうか。

 カイトは慌てて車を降りると、そっちの方に小走りに駆けていった。

「あ…カイト」

 現状を分かっていないような瞳だ。

 まばたきをしていいのか、それとも見開いたままがいいのかすら判断出来ていない。

 大きな目が、いまにもこぼれそうなままカイトを見ていた。

 そんな彼女の腕を、ぐいと掴んで家の中に連れ込む。

 掴んだパジャマの腕が、冷たいことが分かってムッとする。

 これでは、何のために彼女をベッドに置いて出かけたのか分からないではないか。

 外は、こんなに寒いのに。

「あ、あの…あのトラック」

 あれだけ大きなものだ。

 どうあっても、彼女の視界に入っただろう。

 その件について、引っ張られながらも言及してこようとする。

 しかし、カイトは聞かずにそのまま階段を上がり、彼らの部屋に戻ったのだ。

 そこなら、暖房が効いている。

「……レンタカーだ」

 暖かい部屋に逃げ込むなり、カイトはぎゅっと彼女を抱きしめた。

 やっぱり冷え切っている。

 トラックにはヒーターがあるので、彼の方がよほど温かだった。

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