冬うらら2
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あんなに、彼女を幸せに出来た証をはずすのは、胸が痛んだのだ。
会社の間だけはずす、ということも考えてはみたが、落としたりなくしたりしたら大変だし、家に入る時にはめるのを忘れていたら、彼女が悲しむように思えた。
だから、いろんな葛藤と戦いながらも、指輪は外せないままだったのである。
「仕事にゃ関係ねぇ! とっとと仕事しろ!」
カイトは怒鳴った。
その怒鳴りは、同時に周囲の連中にも『絶対言及するな!』という釘差しでもあった。
もし言及しようものなら、この通り怒鳴られるぞ、という脅しだ。
第一のスタッフたちは、その怒鳴りに、蜘蛛の子を散らすように各自の作業に戻ったが、ハナという女は目の前でちょっと首を傾げていた。
少し不満そうな顔で。
「YESかNOで済む質問じゃないですか。どうして答えられないんですか? みんなだって、あんなに気になってるみたいじゃないですか。それに、もしここでシャチョーが結婚についてナゾなままにしていると、逆に変な噂が立ちますよ」
結婚相手が誰だとか、結婚生活がどうだとか、聞いてるワケじゃないのに。
バババババババッ!!
またも、マシンガンが乱射された。
カイトは、目をむいたまま彼女を見た。
信じられないほど、気の強い女である。
開発に入る女である時点で、かなりの根性がないと難しいが―― カイトに、ここまで言う相手は初めてだった。
これまで、よく大きなトラブルなしに、人生を生きてきたものだ。
ちょっと『男』であるという事実に対して、プライドの高いヤツに出会って、こんな調子で食ってかかろうものなら、内容が正論だろうが何だろうが危険である。
そういう意味では、女という生き物は損だと、カイトは思っていた。
戦う人生を選んだ時、余計な困難が目の前に降りかかるからだ。
いろんな女がいるものである。
いままで、女の個性というものには興味がなかった。
母親やハルコが、今まででは一番身近な女性だったが、興味という点ではなかったのだ。
しかし、メイと出会ってから、『女』という生き物が、断片的ではあるが見えるようになったような気がする。
あんなに、彼女を幸せに出来た証をはずすのは、胸が痛んだのだ。
会社の間だけはずす、ということも考えてはみたが、落としたりなくしたりしたら大変だし、家に入る時にはめるのを忘れていたら、彼女が悲しむように思えた。
だから、いろんな葛藤と戦いながらも、指輪は外せないままだったのである。
「仕事にゃ関係ねぇ! とっとと仕事しろ!」
カイトは怒鳴った。
その怒鳴りは、同時に周囲の連中にも『絶対言及するな!』という釘差しでもあった。
もし言及しようものなら、この通り怒鳴られるぞ、という脅しだ。
第一のスタッフたちは、その怒鳴りに、蜘蛛の子を散らすように各自の作業に戻ったが、ハナという女は目の前でちょっと首を傾げていた。
少し不満そうな顔で。
「YESかNOで済む質問じゃないですか。どうして答えられないんですか? みんなだって、あんなに気になってるみたいじゃないですか。それに、もしここでシャチョーが結婚についてナゾなままにしていると、逆に変な噂が立ちますよ」
結婚相手が誰だとか、結婚生活がどうだとか、聞いてるワケじゃないのに。
バババババババッ!!
またも、マシンガンが乱射された。
カイトは、目をむいたまま彼女を見た。
信じられないほど、気の強い女である。
開発に入る女である時点で、かなりの根性がないと難しいが―― カイトに、ここまで言う相手は初めてだった。
これまで、よく大きなトラブルなしに、人生を生きてきたものだ。
ちょっと『男』であるという事実に対して、プライドの高いヤツに出会って、こんな調子で食ってかかろうものなら、内容が正論だろうが何だろうが危険である。
そういう意味では、女という生き物は損だと、カイトは思っていた。
戦う人生を選んだ時、余計な困難が目の前に降りかかるからだ。
いろんな女がいるものである。
いままで、女の個性というものには興味がなかった。
母親やハルコが、今まででは一番身近な女性だったが、興味という点ではなかったのだ。
しかし、メイと出会ってから、『女』という生き物が、断片的ではあるが見えるようになったような気がする。