冬うらら2

 きっと、このハナという女は、戦うのが好きな女、なのだ。

 戦うことで、自分の強さが証明できることを、いままでの人生のどこかで覚えたのだろう。

「分かりました…」

 カイトが、目つき悪くだんまりになってしまったので、ようやくあきらめたのか、ハナはふーっとため息をついた。

 彼の根気勝ちである―― と思われた直後。

「シャチョーは、結婚されたんですね」

 ぱっきり。

 そこらの木の枝でも手折るように、あっさりと彼女はそんなことを言った。

「否定するなら今ですよ……ここでシャチョーが『オレは独身だ!』と否定しなければ、結婚しているということに決定的になってしまうでしょう?」

 にまっ。

 さあ、どうぞ。

 そして、笑顔で否定を要求してくるのである。

 その問いかけが、あまりに新しい手法すぎて。

 少なくともカイトのわずかな左脳では、速攻で処理出来ないレベルの内容だったのだ。

 固まったままのカイトを目の前に、ハナは自分の腕時計を見た。

「10秒たちました! 結婚おめでとうございます!」

 何が10秒で。

 何がおめでとうございます、なのか。

 なのに、もうこれで100%確定しましたと言わんばかりに、彼女は笑顔で祝福の言葉などを並べるのだ。

「ほらほら、ほかのスタッフの皆さんも! シャチョーが結婚したんなら、みなさんだって『おめでとうございます』って言いたいでしょう?」

 おまけに。

 せっかく散った蜘蛛の子を、また笛で呼び集めるのである。

 ま、待て。

 カイトは止めようとした。

 なのに、ハナはみんなを立ち上がらせて、彼の方を向かせるのだ。

 チーフなんかは、おかしくてしょうがないという表情をしていた。

「はい、みなさんご一緒に…!」

「「「結婚、おめでとうございます!!」」」

 カイトは、全員の祝福に針のむしろでスマキとなった。

「仕事しろー!!!!」

 ぶっ殺すぞ、てめーら!

 今度の怒鳴りは、ようやくマシンガン娘も蜘蛛の子にしたのだった。
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