冬うらら2

「これは、カイト君にもらったの?」

 彼女の左手を捕まえて持ち上げるなり、質問の第一声が飛び出る。

 メイの方はというと、いきなり間近な声でびっくりして飛び起き、お客がハルコであることに気づき安心するまで、もうちょっと時間がかかるようだった。

 瞬きをいっぱいしながら、落ち着かない目でハルコを映していた。

「ああ、ごめんなさいね…ちょっと驚いて」

 予想以上に、はしゃいでしまった自分に気づいて、彼女は苦笑した。

 しかし、気になる。

 メイの左手に輝いている、プラチナ・リング。

 いままで、一度だって彼女の指にリングはなかった。

 なのに、今日になって突如現れたのである。

 頭の中に、カイトがどうやってメイにリングを渡したか、という疑問が渦巻く。

 彼が自分で指輪の必要性に気づいたのだろうか、という根本的な部分から、指輪をはめさせるまでの過程を想像しようとするが、なかなかうまくいかない。

 メイが、ねだったのだろうか―― いや、それもありえないような気がした。

 夫の入れ知恵かとも思ったが、家で彼はそういうことを話していなかった。

 早く、彼女の口から謎を解いてもらわないと、ハルコは今夜眠れそうにない。

 しかし、あえて深呼吸を一つして。

「一緒にお茶でも飲みながら、ゆっくり話を聞かせてね」

 そう言って、調理場の方に向かう。

 焦ったら、青い鳥が逃げそうな気がしたハルコは、誰よりも我慢強かった。

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