冬うらら2

 あの手。

 この手。

 というワケではないが、恥ずかしがって余り自分から語ろうとしない相手を前に、何とか話題を誘導して、少しずつ全容を明らかにしていった。

 まあ、まあ、まあ!!!

 一つ出てくる度に、ハルコは嬉しい驚きに包まれた。

 あのカイトが、自分から彼女を宝石店に連れて行ったのである。

 この事実だけでも快挙なのに―― その上、カイトも結婚指輪をしているというのだ。

 いままでの彼を知るハルコからしてみれば、信じられなかった。

 カイトが指輪を。

 世の中のカップルを、いつも『ばっかじゃねーの?』と、思っていたような彼である。

 たとえ結婚指輪とは言え、そういう『愛の形』なるものを、喜んで受け入れるとは思わなかった。

 つくづくメイという人間の、彼への影響力の凄さを思い知らされるのだ。

 あのカイトが、結婚式で見せ物になることを許可したのも。

 結婚指輪を買ってはめたのも。

 全部、彼女がいたからこそ、だ。

 しかし。

 その事実をメイは、100%正しく受け止めてはいなかった。

 受け止めているなら、もっと自分が愛されている自信というものが、オーラで表れているに違いない。

 確かに、彼に愛されて見違えるように綺麗になっているメイだったが、きっと少しずつしかカイトの気持ちを受け入れられないのだ。

 それは、カイト君も一緒ね。

 彼女の一言一言から、いかにカイトのことが好きなのか溢れ出してくる。

 けれども、そういう端々から気持ちを拾うのが苦手な相手に言うのでは、実力の50%も発揮出来ないだろう。

「よかったわね」

 指輪事件をあらかた聞き出したハルコは、最後に笑顔でそう言った。

「まだ、ホントは…信じられないんです」

 困ったような笑顔で、メイはそう言った。

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